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変なやつの変なブログ

猫とゲームと何かで塗り固められた何か

無題3

日曜日の朝。昨日の夜に干した洗濯物を取り込んでいると、私はある異変に気がついた。

下着がないのだ。

下着泥棒という言葉はたまにテレビで聞くが、まさか男性である私のもとにも下着泥棒がくるとは。
ゲイの方の仕業だろうか。それとも女性の仕業だろうか。正直、女性だったらいいな、と思っている自分がいる。そして美人だったらなお良い。いや、そんなことをする美人とは付き合いたくないな。ボロアパートの一階に住んでいるということも、狙われる原因の一つなのだろうか。
なに、下着を盗まれたこと位、どうということはない。パンツが盗まれたらまた買いにいけばいいだけの話だ。私は腐っても男。その程度で怖くなって泣いたりなどせんよ。


しかし、その次の日も、そのまた次の日も、下着は盗まれ続けた。
やはり、犯人を放っておくのが一番悪かったのだろうか。このまま完全に常習化されてしまうと、盗まれるたびにパンツを買わなければならなくなり、私の家計はパンツで圧迫されることになる。だからといってパンツを履かない生活をすると人間性を疑われる。

私は何か対抗策を考えることにした。しばらく悩んだ末、防犯カメラを買うことにした。
そこら辺の電気屋で安いのがあったので適当に買ってきてベランダに設置をする。これで対策はバッチリだ。犯人への威圧にもなるし、これでもう安心だろう。


翌日。ベランダを見ると、粉々になった防犯カメラが床に散乱していた。「破壊された」というより、「床に叩きつけられた」といった具合に壊れている。もちろん、下着は消えていた。
私は今更ながら怖くなった。下着泥棒の謎の執念に恐怖し、おもわず泣きそうになった。

その恐怖からか、安いといっても一万円はした防犯カメラを一日で壊されたことからか、私は自暴自棄になった。
近くのスーパーで大量の男性用下着を買い込み、ベランダに吊るしまくった。赤、青、黄、緑、スパンコールなど多種多様な男性用下着がベランダを飾り立てた。
これほどの下着を下着泥棒に与えれば、相手も満足して泥棒を止めてくれるだろうと思ったのだ。

傍から見れば、「異様」を通り越して「不気味」だっただろう。ボロいアパートの一階に、ご自由にお取りくださいと言わんばかりの量のパンツがぶら下がっているのだ。近所に住む人のほうが恐怖したに違いない。


翌日。果たして、下着は全て盗まれていた。
しかし、いつもとは少し違う点が見られた。下着が落ちていたのだ。まるで、ヘンゼルとグレーテルがパンの欠片を森に落としていった様に、赤や青の下着が点々と地面に落ちている。
私はその下着を回収しながら歩いていった。すると、終着地点はアパートの縁の下だった。私が恐る恐る縁の下を覗くと、そこには今まで盗まれてきた私の下着と、一匹の猫がいた。

犯人は縁の下に住み着いている野良猫だった。男性用下着のゴワゴワした感触がお気に召したのだろうか、私の下着は野良猫の巣と化していた。
防犯カメラが壊れていたのは、猫が、干してある下着を取ろうとジャンプしたときに、猫に当たって落ちたからなのだろう。取り付けが甘かったのかもしれない。

私はホッとした。犯人が人間でないと知った瞬間、不安や疲れが一気に消えたような気がした。
今夜は久しぶりにゆっくり眠れそうだ。


その日から、私の下着が盗まれることはなくなった。猫が巣作りに十分な量の下着を得たからだろう。私は野良猫の巣作りに思わぬ形で貢献できたようで、何だか嬉しくなった。

また、私は近所の小学生に「恐怖のベランダパンツ男」と呼ばれるようになったのだが、それはまた別の話。