変なやつの変なブログ

猫とゲームと何かで塗り固められた何か

記憶の中の微妙な臭いは俺を微妙に誘う

ぐるなびお題「思い出のレストラン」
http://blog.hatena.ne.jp/-/campaign/gnavi201503

俺は小学生まで北海道の浦幌というなかなかの田舎に住んでいた。
東大和や東村山を田舎などとぬかす輩が東京にはいるのだが、そういうやつは取り敢えず浦幌に行ってみてほしい。度肝を抜いてぎっくり腰になるに違いない。

・自宅から帯広イトーヨーカドーまで一時間~二時間かかるのは当然。イオンまでは二時間~三時間かかる。
・住民の約八割が見たことある人。内、六割くらいが知り合い。
・信号が数えるほどしかない。
・真っ昼間に駅前の道路の中心を堂々と歩ける。
・夕方になると何千羽というカラスが一斉に飛び立つ。
などの田舎要素をふんだんに取り込んだ魅力的な町だ。
まあ、日本にはもっとすごい田舎があるのだろうが、俺の記憶上では一番の田舎と言えるだろう。


さて、そんな愉快でファンシーな浦幌町の道の駅には、一件のレストランが併設されている。
「うらほろ亭」というところだ。

http://r.gnavi.co.jp/g5ycu93y0000/

このうらほろ亭、パソコンなどで外観をみる限り普通のレストランなのだが、実際に行ってみるとすごく怖い。
「え……。ここ、本当にやってるの? 営業中だよね?」と不安になる。
小さい頃に初めて家族で行ってみたときは、皆で「入って大丈夫だよな……」とドキドキしていた。

店内の見た目はまあ普通。しかし、なんか独特な臭いがしていた。嗅いだことのない微妙な臭いだった。
座敷の近くの棚には少年ジャンプと少年サンデーが無造作に突っ込まれており、俺は少年ジャンプを手に取って座敷で読み耽っていた。


ここの店の看板メニューは、スパゲッティーにカツレツを乗せた「スパカツ」という料理だ。
「は? スパカツと言えば釧路の泉屋だろ?」という人がいるかもしれないが、うらほろ亭の店主は泉屋で修行をしていた方らしく、店の外に設置されている旗にも「スパカツ」とでかく書いてあった。

初めて店にやってきた俺と俺の家族は、そのスパカツを注文した。少年ジャンプを読みながらしばらく待っていると、小さなフライパンの上に載せられたスパカツがやってきた。

味は「…………うん。おいしい」と言える無難な味。サイゼリヤで出されるスパゲッティーが50点とすれば、ここのスパカツは65点くらい。
小さなフライパンの上に載せられ、フライパンと接している、ほどよく焼けた麺がカリカリと香ばしく「…………うん。おいしい」と再び呟かせる。

全ては、店内の謎の臭いのせいなのだ。ほかのどこの店でも嗅ぐことのできない (であろう)、その微妙な臭いがスパカツと混ざりあい、本来「うめぇ!」と言わせるものを「…………うん」で止めさせてしまうのだ。

そして、スパカツを食い終わった家族は、「おいしかったね」という非常に軽くて薄い会話をしながら車に乗り込むのであった。


酷評してるように聞こえるかもしれないが、そんなことはない。俺は浦幌に住んでいた頃、何度かうらほろ亭に家族で行ってスパカツを食った。そのたびに「…………うん」と微笑み、帰った。今ではいい思い出だ。

棚に入っていた少年ジャンプも密かな楽しみだった。当時連載されていた「ToLoveる」を親から隠れて読み、性に目覚めたという小学生ならではの思い出もある。

いずれにせよ、うらほろ亭は俺にとって思い出のレストランだ。あの独特な臭いはまだ残っているのだろうか。もう一度行ってみたい。
行けなくても特に後悔はしないが。