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変なやつの変なブログ

猫とゲームと何かで塗り固められた何か

少年の慟哭

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今日、地震があったそうだ。震度5弱とか震度4とか大きいものだったそうだが、俺は全く気がつかなかった。
いつもは微動だにしない俺の緊急地震速報アプリも珍しく働いてくれたようだが、残念なことに、彼がけたたましいブザーをポケットのなかで鳴らしている間、俺はiPod nanoでボカロとかホルモンとか西原健一郎とか龍が如くSIRENシリーズのサントラとかを聞き流しながら『海辺のカフカ』を読んでいたため気付かなかった。
地震発生中も、俺は駅のホームで『海辺のカフカ』を必死に読んでいた。正直、村上春樹の本は何だかよくわからない。しかし、謎の魅力がある。『色彩を持たない多崎つくると…』も読んだことがあるが、よくわからなかったが面白かった。この『海辺のカフカ』も今のところ何が何だかよくわからないが、面白い。
因みに、宮沢賢治の『銀河鉄道の夜』はこれっぽっちも理解できなかった。あれだけは百回読み返しても理解できない自信がある。

きりのよいところで本を閉じると、同時に電車がやってきた。車内はいつも通りの風景。血眼になってスマホを弄る人もいれば、疲れきった表情で明後日の方向を見つめている人もいる。談笑する高校生、文庫本を手に持ったまま寝ている女性、ニコニコしながら外を眺めるおっさん、きりりとした顔の小学生…。
そんななか、一人の少年が(色んな意味で)注目を浴びていた。ひどく泣いていたのだ。いや、「泣く」というより「哭く」と表現したほうがいいだろう。
「ヴア"ア"ァァァァァァァ!!!」と、某元議員もびっくりの泣き叫びっぷり。地団駄を踏み、両親と思しき人物の服を引っ張り、「ヤダァァァ!ヤダァァァァ!!」と必死に何かを抗議する。
泣く子供とは毎日電車に乗っているとたびたび遭遇する。シクシクと泣く子もいれば、ウエーンと泣く子もいる。しかし、これほどに慟哭している子供に遭遇したのは初めてだ。その声量は緊急地震速報のブザー音を遥かに凌駕する。

そんな台風のような彼を静めたのは、意外にも彼の父親(と思しき人物)だった。父親は、彼と優しく会話をすることで彼を宥めたのである。
そして、少し静かになってエグエグとしゃくりあげる少年を、今度は彼の母親がそっと抱いたのだ。

俺は、この一連の動作を目の当たりにしたとき、少し驚いてしまった。全く子供を叱ることなく、泣き止ませる方法があるだなんて知らなかった。ドラマでしか見ることがような理想の家族像を、俺は現実で見たのだと思う。
感動した。俺はちょっとだけ感動した。


感動しながらふと目を横にやると、セーラー服を着た可愛らしい少女が視界に入った。今どきセーラー服なんか珍しいな、とドキドキしてしまったせいで、俺は先程の感動を帰宅するまで完全に忘れてしまった。
俺が感動する映画の内容をすぐに忘れてしまう理由が、ちょっとだけ分かった気がした。