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変なやつの変なブログ

猫とゲームと何かで塗り固められた何か

無題2

――ある朝、私がなにか気がかりな夢から目を覚ますと、自分が寝床の中で一つの巨大なキャベツに変っているのを発見した。

私にも多少変身願望はあった。一応私は腐っても男だから、小さい頃から仮面ライダーとかスーパーマンとかに変身して悪をやっつけたいと考えたことはある。無論、大人になっていくにつれてその願望は徐々に消えていったが、それに似た妄想をすることはたまにある。変身とはまた違うだろうが、大金持ちになりたいとかハーレム王になりたいとか。
物事が簡単に実現しない今だからこそ、この妄想力はより力を増したのかもしれない。そしてその妄想力が力をつけすぎて、現実世界にまで侵食してきたのかもしれない。

しかし……キャベツか。

キャベツは想定外だ。キャベツになりたいとは全く考えたことがない。というか、キャベツが変身の対象になり得ることに驚きを隠せない。これにはグレーゴル・ザムザもびっくりだ。


私がキャベツになってから約一時間半経過した。そして、キャベツにはキャベツ特有の感覚があることがわかった。キャベツには目も耳も鼻もないのに見えるし聞こえるし嗅げる。これは、人間であった頃の感覚とはまた一味違うものだ。
さらに、自分の鮮度を明確に知る感覚もあることに気付いた。私の鮮度は最高だ。収穫直後のキャベツと言えるだろう。もっともシャキシャキで味のいいキャベツだ。

まあ、こんなことを知ったところでどうにかなるわけでもない。人間に戻りたいが戻れないし、動けないから友人や家族に連絡をとることもできない。声もでないから助けも呼べない。
最悪だ。
このまま私は腐っていく悲しみを味わうだけなのか。

そのときだ。私の部屋のドアがゆっくりと開いたのだ。助けがきた。そう思った。

飼い猫だった。いつもより起床が遅い飼い主を呼びにきたのかもしれない。腹が減ったというようにニャーニャー鳴きまくっている。
しばらく部屋をぐるぐると歩いていたその猫は、ベッドに置かれた大きなキャベツを見て目を光らせた。

嫌な予感しかしない。

案の定、私は食べられた。猫はもう夢中になって私にかぶりついていた。
私はこのとき、最上の興奮と幸せを得た。別にマゾヒストだったわけではない。きっとこれもキャベツ特有の感覚なのだろう。人間だったときにした自慰行為の何倍も興奮した。

これがキャベツか。キャベツになるのも悪くない。寧ろ、キャベツになってみて良かったと思う。
人生、なんでも経験することが大切なんだな……。


目が覚めた。
少し頭がボーッとするが、何だか変な夢を見ていたような気がする。いつもの様に私はベッドから起き上がり、大きな伸びをした。
今日は無性にキャベツが食べたい。